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ドイツ1部監督。青森山田前監督

時を忘れさせる天才指導者  邱建新コーチ

時を忘れさせる天才指導者  邱建新コーチ

 青森山田学園で14年間ずっと「選手にもっともっと強くなって欲しい。世界でメダルを獲って欲しい。」その「粉骨砕身」の気持ちで選手と接しています。ず~っと一緒に練習をしていて、ずっ~とベンチに入っていると、例え日本のタイトルを獲った選手でも、課題がたくさん見えてきます。本気で彼等(※注1)に勝とうとするなら、その前に越えなければならない山々がいくつもそびえています。

 卓球は一人の指導者では指導しきれない要素がたくさんあると感じています。偉大なる先輩や全国的に名のある指導者の方にお願いし、青森山田の選手のプレーを見てご指導していただくことも多々あります。しかしそこは選手。疲れてくると集中力が落ちたり、時計をチラッと見たりしてしまう場面もあります…..。

 一年前の平成26年度甲府インターハイ。前年度の北九州インターハイ男子学校対抗決勝で敗退し日本一を獲れなかった私共は、7月に中国ハルピンで合宿を行い是が非でも日本一を奪回する気持ちでいっぱいでした。毎年行う中国合宿ですが、例年と違ったこと….それは、邱さんに同行していただいた事です。(最近では、水谷隼選手のベンチコーチとして、おなじみの方も多いかと思います^^)

 中国では、フットワーク練習を少なくし、とにかくゲーム練習をたくさんやるようにしています。次から次へと色んな戦型の選手とゲーム練習ができるのは日本ではなかなか有り得ない環境といえます。しかもみんな癖があります…..。

 ハルピンでの練習初日、あまり勝ち星が伸びず、少し焦り気味の板垣。邱さんは「移動後の初日は難しいから。焦る必要はない、大丈夫。帰る頃には圧倒しているよ。」と言って下さり、「じゃあ今から多球練習!」と青森山田の選手だけを集めました。時間は夕方4時半。「え?邱さん、今から多球?選手は移動の疲れでクタクタだし、明日のゲーム練習大丈夫?」私は思いました。

 ここからが天才指導者の真骨頂です。2分くらいずつの多球練習のやり方と目的、何故今それをやるのかを細かく選手に説明した後、激しい多球練習がスタート!あれだけ疲れていたはずの選手たちの顔に明るさが蘇り、元気良く!青森山田らしく練習が再開されました。そして、終了予定時刻の5時半過ぎ、「そろそろ終わって夕飯に行かないと、夕飯に間に合わなくなる….。」と心配している板垣をよそに、選手は一向に練習を止めようとしません。同じミスをする選手には何故ミスしているのかを細かく指導し、「ティモ・ボルはこうだろ!オフチャロフはこうだろ!」「だからこの練習をやり込まないと!」と例えに使う選手のレベルが高く、選手は何かに引き込まれたようにボールに集中しています。「これ以上遅くなると本当に夕飯抜きになってしまう。ピピー!」笛を鳴らしてようやく今日の練習を強制終了!「邱さん、選手の集中力は凄いね!」「板垣、明日以降もっと面白いの見せてあげるよ。」邱さんは不敵に笑いました。

 翌日、ゲーム練習では何とか勝ち越すことができ、時間はすでに午後の5時。「板垣、今日、多球やる?俺はやっても良いよ。」「邱さん1時間だけお願いします。」選手は昨日よりも疲れた顔つきだけど大丈夫かな…。昨日同様、邱さんが選手を集め、多球練習のメニューの指示をしスタート。ところが、昨日とは違う練習メニューに選手たちの「元気」は復活し、昨日よりも質の高い多球練習を展開していく。今日も「そろそろ終わって夕飯に行かないと、夕飯に間に合わなくなる…」

 合宿3日目、また同じ光景。昨日よりも一昨日よりも質の高い多球練習。「夕飯は…..。」また新しい多球練習のメニュー。「お前ら疲れてるんじゃないの?」板垣の心配は「そろそろ終わって夕飯に行かないと、夕飯に間に合わなくなる…」ばかり。4日目もまた「もっと質の高い….。」、5日目、6日目最終日…….。最後まで途切れることなく…。

 途中、ハルピンの男子監督と邱さん、板垣でコーチ室で休憩しているときに、談笑から急に二人が中国語で真顔の話をし始めました。そして最後に邱さんが笑って締めました。
「邱さん、何て言ってたの?」
「毎日の多球練習の様子を見て、あれは凄い!現代卓球に必要なシステム練習も、体力を鍛える練習も入っている。でもそれより驚いたのは毎日新しいメニューに選手は新鮮で、時を忘れて練習に没頭している。あんな練習の雰囲気は中国でも見たことないって言っていたんだよ(笑)。」
「で、俺が水谷と専属コーチ契約したのを知っているから、もし、水谷を中国に勝たせたら本当に中国から怒られるよ!と言ってきたけど、強くして勝たせるのがプロコーチの仕事だし(笑)。」

 合宿の中盤、邱さんと夕飯を食べているとき、思い切って質問してみました。「邱さん。わずかな謝礼しかできないのに、何でそこまでしてくれるの?」「板垣、俺はお前に感謝しているよ。今まで選手を送ってくれて、しかも、日程が合わなかったり色々と急なトラブルもあったけど、お前は全部約束を守ってくれた。だから俺も、強くする約束を守る。」世界のトップコーチの言葉に、もう涙が止まりませんでした(笑)。
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 合宿後半のゲーム練習では、ほぼ圧勝に近くなり、最終日には「団体戦にしようぜ!」と挑戦してきたハルピンチームをほぼノックアウト状態で返り討ち!みんなクタクタで、「やるだけやった!」という充実感で帰国しました。あとは本番で結果を恐れることなく、自分たちを信じてラケットを振りぬくだけ….。

 平成26年度甲府インターハイ。男子学校対抗のタイトルを奪い返し、坪井勇磨が男子シングルスを制覇し、坪井勇磨・三部航平組が男子ダブルスを制覇しました。試合が終わった直後に携帯の「WeChat」に邱さんからメッセージが入っていました。応援選手が実況中継してくれていたのかな?

「Congratulation! Itagaki! Sankan-Ou Omedetou!」いつものあの声でメッセージを入れてくれていました。
 涙腺の弱い板垣は、人目を憚ることなく涙を流しました。ありがとうございました。と。

(※注1)彼等とは、馬龍、張継科、許昕です。(笑)。
(※注2)実はもう一人「時を忘れさせる」指導者がいます。近いうちに書いてみたいと思います^^。

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